【弁護士に聞く】航空会社が倒産したら旅行会社に払い戻しの責任はあるのか?

  • 2021年1月20日(水)

 旅行・観光産業は新型コロナウィルスにより多くの問題に直面している。その一つの例が航空会社からの払い戻しに関する問題だ。コロナによる影響で多くの航空券の払い戻しは遅れることとなり、場合によっては未だ払い戻されていないケースもあるが、ではその責任の所在はどこに帰属するか。今回はそんな問題を旅行業界の法律に詳しい弁護士の三浦雅生氏から解説をいただいた。

国際航空券を巡る現状

 新型コロナウィルスは、人と人との接触を断ち、人の移動にも制約を課した。それでも、東アジアを除く地域では感染拡大が止まらず、日本でも感染爆発かとして2回目の非常事態宣言が発せられた。国際間の移動手段である航空運送の需要はほぼ完全に蒸発し、再開の目途もつかない。国内需要も同様の状況に近づきつつある。

 発券済みの航空券は欠航により代金の払い戻しをしなければならないが、資金繰りから一時に払い戻しのできない外国の航空会社は、自社利用クーポンによる代替、1年間の猶予等を求めている。中には破産申請をする航空会社も出てきている。不安を覚える旅行者は、購入した先の旅行会社に払えと迫る。

国際航空券の流通経路

 国際航空券の流通は、国内に比べるといささか複雑なようだ。IATAの公認代理店資格のある旅行会社は、航空会社の代理人となって、航空券を発券販売している(IATA非加盟の航空会社の場合も、同社から個別に航空運送代理店業務を委託されている旅行会社は同様で、以下両者を含めて公認代理店資格という)。そうした資格のない旅行会社は、公認代理店資格のある旅行会社に発券してもらい、旅行者に販売している。公認代理店資格のある旅行会社と旅行者間には複数の旅行会社が入る場合もある。

 販売の仕方は、ホテルと組み合わせた企画旅行としての場合と、航空券単体を販売している場合がある。航空券単体を販売する場合も、仕入れ値を開示して別途取扱手数料を徴収する場合と、仕入れ値に自社の利益をオントップして、包括の料金を徴収して販売する場合がある。

 これらのうち、企画旅行として販売されたものは、航空便の欠航により企画旅行を催行中止にする場合は、旅行会社の商品であるから、航空会社による払い戻しの有無には関係なく、旅行会社自身が航空券代金を含む旅行代金を払い戻す責任がある。航空券単体の販売であっても、仕入れ値を開示せずに利益をオントップしての包括料金での販売は、観光庁解釈によれば企画旅行契約になることから、同様である。

手配旅行としての航空券販売

 そこで、航空会社による払い戻しの遅延につき、旅行会社の責任として問題となるのは、航空券の仕入れ値を開示し別途取扱料金を収受して航空券単体を販売した場合に限られる。手配旅行契約と呼ばれているものである。

 ここまで便宜上、「販売」という言葉を使ってきたが、航空券販売は売買契約ではない。航空会社が直接に航空券販売をする場合を考えれば容易にわかるように、航空券販売とは航空会社が旅行者に対して航空券記載の区間の航空運送サービスを提供することを約束した契約である。航空運送契約と呼ばれ、航空券は通常同契約成立の証として発券されるものである。公認代理店資格のある旅行会社は航空会社の代理人になるから、この場合も航空券販売により、航空運送契約が航空会社との間に成立することになる(余談だが、この場合には旅行会社と旅行者間に手配旅行契約が別途成立するという構成は不要である)。

 旅行会社は、代理人に過ぎないので航空券代金の払い戻しの責任を負うことはない。旅行会社が航空券代金の払い戻しの窓口となっているのは、自覚があるかは疑わしいが、航空会社からの航空運送代理店業務委託契約にそう定められているからだ。

 これに対し、公認代理店資格を有しない旅行会社の場合には、旅行者の依頼に基づいて、公認代理店資格のある旅行会社から航空券を仕入れていることになるから、正に旅行者との間で手配旅行契約を結んでいることになる。標準旅行業約款の手配旅行契約の部第2条1項では、「旅行者のために代理、媒介、取次をすること等により」手配するとある。

 航空券販売の場合には、旅行者の名前で航空券を発券し、取引完成までの間に旅行者は公認代理店資格を有する旅行会社と直接に接する機会もないことから、旅行会社は旅行者の代理人として公認代理店資格のある旅行会社と取引をしていると見るべきだろう。そうすると、航空運送契約は、航空会社代理人の公認代理店たる旅行会社と旅行者代理人の旅行会社間で航空券が発券販売されることで、航空会社と旅行者間に直接に成立することになる。

 したがって、この場合も、手配を依頼された旅行会社は、手配した航空便の欠航による航空券代金の払い戻しにつき責任はないことになる。さらに、この場合は、旅行者の代理人であったに過ぎないから、航空券代金の払い戻しに関与する責任すらないことになる。

 旅行者には気の毒だが、航空運送契約の当事者である以上は、契約の相手方の倒産等のリスクは自身が負うしかないのが、契約自由の原則(資本主義)の帰結だ。

三浦雅生 弁護士
75年司法試験合格。76年明治大学法学部卒業。78年東京弁護士会に弁護士登録。91年に社団法人日本旅行業協会(JATA)「90年代の旅行業法制を考える会」、92年に運輸省「旅行業務適正化対策研究会」、93年に運輸省「旅行業問題研究会」、02年に国土交通省「旅行業法等検討懇談会」の各委員を歴任。15年2月観光庁「OTAガイドライン策定検討委員会」委員、同年11月国土交通省・厚生労働省「「民泊サービス」のあり方に関する検討会」委員、16年1月国土交通省「軽井沢バス事故対策検討委員会」委員、同年10月観光庁「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」委員、17年6月新宿区民泊問題対策検討会議副議長、世田谷区民泊検討委員会委員長に各就任。

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